Cultivate one Future 〜未来を耕すTOWINGの挑戦〜

sora note vol.1

「食べる喜びを、作る喜びから、デザインする。地球と宇宙で暮らす未来の人々のために。」


私たちTOWINGは上記のようなビジョンを掲げ、宇宙農業の実現と、地球農業の発展を目指し、日々研究を進めています。

SORANO SATELLITE MAGAZINEでは、宇宙農業の実現から、地球での農業への応用、そして家庭の食にまつわる話まで、「食と農」について幅広く発信していきたいと思っています。

まずは数回にわたって、宇宙農業の現状についてのお話をします。
月への移住を実現するという、夢のような研究が、着々と進められていることに驚かれるかもしれません。
初回は、月に移住するために、月で農業を始めようと考えた人々の研究についてのお話です。JAXAが進めている月面農場ワーキンググループ(以下「WG」)の報告に沿って解説します。


月産月消


人類が地球上で活動範囲を広げてきた過程には、探索→開拓→定住という3つのステップがあります。

さらに人類は地球を飛び出して、地球の外側 “地球低軌道” に国際宇宙ステーション(ISS)を築きました。国際宇宙ステーションには2000年ごろから人が常駐しているので、地球低軌道は今や人類の定住域の一つと言っていいでしょう。

国際宇宙ステーションの次に人類が目指したのは、月です。月に人類が住むためには、当然ながら衣・食・住の確保が必要不可欠です。この中でも、私たちTOWINGは「食」にフォーカスしています。

既に宇宙飛行士が長期滞在している国際宇宙ステーションの「食」はどのように賄われているのでしょうか。基本的には、地球からの定期的な食糧補給によって、「食」を賄っています。では、その運搬にはどのくらいの費用がかかっているでしょうか?1kgの物を宇宙に運ぶのに、およそ100万円かかると言われています。
野菜を1日に350g食べるとすると、1ヶ月で約10kgとなり、輸送にかかる金額は約1000万円です。これでは持続不可能に思えませんか?

こうした背景を受けTOWINGが考えたのは、野菜を運ぶだけではなく、現地で栽培すること、つまり月産月消(地球でいう地産地消)を目指す、ということを考えています。冒頭申上げたように、月面での栽培=宇宙農業の実現こそが、私たちTOWINGの使命です。しかし、宇宙農業を実現するためには、新たなブレイクスルーが必要です。

月面で作物を栽培するには、月に存在する資源から、水や空気などを作り出す技術が必要かもしれません。その他にも、農業ゾーンの建築、宇宙線からの隔離といったインフラの整備、光や電気の効率的な利用といった、物質やエネルギーの循環が必要となります。

ここから、JAXAの具体的な取り組みを見ていきましょう。


月面人類のコア技術


宇宙航空研究開発機構.”月面農場ワーキンググループ検討報告書”.JAXA│宇宙探索イノベーションハブ.2019-05-31.https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html

月面農場WGは、人類が月面に定住することを想定し、安全かつ持続的な定住を可能にする方法を検討することを目的として設立されました。より具体的に検討を進めるために、以下の4つのサブグループが構成されました。

①環境制御
宇宙特有の環境条件での栽培作物ごとに適した環境を作り出すことが目的です。植物のガス交換および成長に対する水や光、大気などの影響に加えて、重力や低圧環境などの影響についても検討します。

②無人化
テクノロジーを駆使して,可能な限り自動作業できる最適な栽培方式や機械化手法を提案することが目的です。既存の技術を応用に加え、ドローン、ロボットの開発やセンシング方法の確立等を検討します。

③リサイクル
持続的な月面農場を成り立たせるために必要な循環システムを構築することが目的です。植物残渣や排泄物に加え、レゴリス等の現地資源を地球で実用化されている技術や微生物を用いて有効的に活用できる方法を検討します。

④全体システム
システム全体を統合し、生命維持システム設計の観点から、月面農場全体の仕様を算出することが目的です。最新の植物工場の知見を取り入れ、農場全体のバランスや、育てる作物の種類を検討します。

主にこの4つの視点から、まずは6~100人規模の定住を想定した月面農場実現に向けての研究が進められています。さらに、2040年には月面に1000人が定住することが目標とされています。


地球を耕す宇宙農業


月面農場のように、過酷環境での農業を実現するための技術は、地球上に住む私たちにも恩恵を与えてくれます。

宇宙から地球へのイノベーションの例としては、LEDや多段式養液栽培があります。

LEDはNASAが省電力に着目し、宇宙での利用を進めたことから地上での植物工場で有効な技術として広がりました。多段式養液栽培は、限られた面積での収量をいかに上げるかを宇宙用に追求した結果により、植物工場内での栽培様式として普及しました。

宇宙航空研究開発機構.”月面農場ワーキンググループ検討報告書”.JAXA│宇宙探索イノベーションハブ.2019-05-31.https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html

このように、宇宙という面積、電力、労働時間などの制約がある場面で生かせる技術は、農業の社会的需要を先取りしているとも言え、地球の未来として予想される極限状態での食料生産や資源、労働力制約の解決に繋がることも期待できるのです。

私たちTOWINGは、月面において現地資源や廃棄物を効率的に活用した持続可能な畑を展開していく役割を担っていきたいと考えています。そして、その技術を用いて、地球で暮らす未来の人々もワクワクするような畑を世界中に展開していきます。

今回の記事では月面農場への取り組みについて、解説してきました。宇宙農業が机上の空論ではなく、現実となる日が遠くないことを感じて頂けたのではないでしょうか?



【参考文献】
1.宇宙航空研究開発機構.”月面農場ワーキンググループ検討報告書”.JAXA│宇宙探索イノベーションハブ.2019-05-31.
https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html
2.宇宙航空研究開発機構.”再使用ロケット”.JAXA 宇宙科学研究所.2019-11-02. https://www.isas.jaxa.jp/outreach/events/opencampus2019/leaflet/1-7.pdf

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