宇宙での水やり~無重力環境における水~

sora note vol.3

前回は、地球上とISSの環境の違いを踏まえて、植物の成長メカニズムについて解説しました。(前回の記事はこちら
今回はさらに植物のメカニズムについて深掘りしていきます。sora note vol.3のフォーカスは、水の制御についてです。私たちが植物に水やりをする際、一般的にはジョウロなどで水をかけていると思います。では、宇宙やISSという微重力空間では、どのように水やりをするでしょうか?

右:Lio.com.” 無重力状態の水の玉に絵の具を加えていくと?NASAが公開した映像が面白い! ”. 2015-10-15.https://hiroki-suzuki.com/colorful-liquid-in-space


植物が水を吸い上げる仕組み


私たちの身の回りでは、水は高いところから低いところへと流れていきます。しかし植物は、重力に逆らって、根から水を吸い上げ、全身に行き渡らせています。実は、植物が根から取り込んだ水を全身に運ぶことができるのは、「毛細管現象」が深くかかわっています。

身の回りで見られる毛細管現象の例には、ティッシュペーパーが水を吸い上げたり、染料で布がカラフルに染まったりすることが挙げられます。万年筆やフェルトペンで文字が書けるのも毛細管現象のおかげです。

毛細管現象は、液体の表面積を小さくしようとする力(表面張力)によってもたらされます。細い管の中にある液体は、表面張力により引っ張られ、だんだんと管を液体で満たす方向へと進んでいきます。



この毛管力のおかげで、植物は、重力に関係なく、根から水を吸い、それを全身に行き渡らせることができるのです。

野口宇宙飛行士のYouTubeチャンネルより。宇宙の水やりの仕方を、野口宇宙飛行士が解説してくれています。

では、植物は、ISSでも水をあげさえすれば、地球上と同じように成長できるかというと、そうではありません。重力が無いと熱の対流が起きず、植物から水が蒸散しにくくなってしまいます。そのため、気流を制御して蒸散を促すことが重要となってきます。

この問題を解決し、栽培できる作物種の多様化にも貢献してる植物栽培装置が、「VEGGIE」です。


ISS(VEGGIE)


NASAの植物栽培装置「VEGGIE」は、ISSにも設置され、栽培実験が進められています。

〈VEGGIE〉
・光と栄養素を供給する装置
・植物の生物学的ニーズに合わせて波長や光レベルを調整し、昼と夜のサイクルを実現する
・熱制御はISSの客室内システムと同様の方法で行われ、二酸化炭素源は周囲の空気を利用

Linda Herridge.”Astronauts Harvest Radish Crop on International Space Station”.NASA Kennedy.2020-12-03.https://www.nasa.gov/feature/astronauts-harvest-radish-crop-on-international-space-station

今までにVEGGIEでは、レタスをはじめ、ミズナ、東京べかな(※)などが収穫されています。東京べかなが、ISSで栽培されているというのは、嬉しいですね!

※東京べかなとは白菜の一種。江戸野菜の一種でもある。

2020年にはラディッシュやトマトの栽培実験も始まっており、今後さらに宇宙産作物の多様化が進むことが期待されます。

月面農場を実現するにあたっても、大規模な植物工場のようなものが想定されています。VEGGIEはいずれ、未来の宇宙に暮らす人々を支えるシステムを持つ装置に成長するかもしれません。



【参考文献】
1.Linda Herridge.”Astronauts Harvest Radish Crop on International Space Station”.NASA Kennedy.2020-12-03.
https://www.nasa.gov/feature/astronauts-harvest-radish-crop-on-international-space-station
2. Ayumi.”雨漏りの原因にもなる「毛細管現象」を元塾講師がわかりやすく解説”.Study-Z.https://study-z.net/100077310

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