月面農場で育てられる作物はこれだ!

sora note vol.4

前回、現在ISSにも設置されているNASAの植物栽培装置「VEGGIE」をご紹介しました。宇宙で栽培可能な作物種が着々と増えていることを感じて頂けたでしょうか。
今回は、将来的に月面農場で育てることが計画されている作物種の紹介と、それらの作物を効率的に栽培するアイデアについて見ていきましょう。


育てる作物8種とその特徴


選ばれた8種を以下に示します。
穀類・・・・イネ 
マメ類・・・ダイズ 
イモ類・・・ジャガイモ、サツマイモ 
果菜類・・・トマト、 イチゴ、キュウリ 
葉菜類・・・レタス


以下、それぞれの作物の特徴です。

①イネ
イネの可食部であるコメは、炭水化物を多く含み、主要なエネルギー源であり、主食となります。日本人を含め親しみがある人が多く、精神面でもいい影響を与えることが期待できます。

②ジャガイモ
安定した収穫が見込め、貯蔵性が高い作物です。主成分はでんぷんであり、ビタミンC、ビタミンB1、カリウムを多く含みます。

③サツマイモ
ジャガイモ同様、安定した収穫が見込めます。イモ類の中では糖分含有率が高く、甘みが強いです。主成分はでんぷんで、ビタミン C、ビタミン E、カリウム、カルシウム、銅などのミネラルと食物繊維を多く含みます。

④ダイズ、エダマメ
「畑の肉」と呼ばれるほど良質なたんぱく質に富み、カルシウム、ビタミン B1、ビタミン B2、ビ タミン E を多く含みます。豆腐、油揚げ、豆乳など様々な加工品に加工されることからも有用性が高いです。エダマメにはビタミンCも含まれます。

⑤トマト
日本では生で食べられることが多く、鮮やかな色で料理を引き立てます。赤い色素はリコピンと呼ばれ抗酸化作用を持ちます。ビタミン C とビタミン A が比較的多く、カリウムを含む緑黄色野菜です。

⑥キュウリ
さわやかな香りと歯触りが特徴で生で食べられる作物です。キュウリの約 95%は 水分であり、残りの 4%にビタミンやミネラル、炭水化物などがバランスよく含まれます。キュウリに含まれるピラジンには血液をサラサラにする効果があります。

⑦レタス
シャキっとしており、何にでも合わせやすい万能野菜です。全体の約 95%が水分で、ビタミン C、E、カ ロテン、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛などを含みます。

⑧イチゴ
さわやかな甘みと香りで万人に好まれる味とされています。果物の中でもビタミン C を多く含み、果肉は多汁質でほどよい甘みと酸味があります。

これらの野菜を効率的に栽培するために、さまざまな方法が提案されています


栽培方法の工夫


月面農場では、限られた面積、労働力で、どれだけ効率的に作物を育てられるかということも重視されます。 特に、今後、月面で過ごす人類の数を増やすためには、その限られたスペースを活用し、作物の栽培量を最大化させるような栽培方法の確立が必要不可欠です。実は、すでに実践されている試みから新しいアイデアまで、月面農場で生かせそうな様々な栽培システムが展開されているのです。

バッチ方式:播種から収穫まで同じところで栽培する方法。
連続方式:ベルトコンベアのような可動式の栽培面を持つ栽培装置により栽培する方法。生育段階に合わせて、株間を少しずつ広げることで、省スペース化する。
多段棚:生育させる棚を単位モジュールとし、それを垂直に積み重ねる方法。

この中の一つ、省スペース化の例として、レタスの連続栽培方式について説明します。

レタスは、らせん状のレーンで栽培することが提案されています。これは、スペース効率を上げる試みとして、地上におけるレタス栽培で既に実証されている方法の一つです。レタスが円形の水槽で中心から外周部へ向けて生育と共にらせん状に移動し、その過程で株間を広げていきます。理にかなった栽培スペースの使い方をしており、有用性の高い栽培方法であると考えられています。

レタスのらせん状栽培 :中心から外周部へらせん状に移動する栽培方法。模式図中の 1~3 の番号は右写真の番号と対応している。1は出芽直後、2は徐々に生育するレタスを示し、3は収穫間際の株間調整を受けたレタスである。

宇宙航空研究開発機構.”月面農場ワーキンググループ検討報告書”.JAXA│宇宙探索イノベーションハブ.2019-05-31.https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html

また、効率化の面で注目したい技術の一つに、イチゴの受粉技術があります。
イチゴは結実させるために受粉が必要であり、農業の現場においてもハチを利用して受粉させたり、手作業により受粉させたりしています。月面農場にハチはいませんし、手作業で受粉させるのも非常に大変なので、自動で機械的に受粉させる技術が望まれます。そこで有望な技術として、超音波フェーズドアレイを利用してイチゴの花を揺らし、受粉させる非接触のシステムが考えられています。

※超音波フェーズドアレイ(Ultrasonic Phased Array)
探触子内部にある数個の超音波振動子から発信するタイミング(遅延時間)を変えることによって、超音波の屈折角、焦点を変化させることが可能な探傷方法で、探傷結果を映像表示が可能な技術

この技術は、イチゴの群落に沿って3D カメラで撮影しながら装置を走らせ、花が認識された場合、指向性のある超音波パルスを用いて花を揺らすことで受粉させるというものです。


他にも、月面農場では複数のドローン・ロボットを協調的に駆使して作物を栽培することが想定されています。既存の技術に加え、新たなソフトウェア開発必要とされており、さらに、それらを最適に組み合わせることが求められます。


今回は、月面農場において初期から栽培することが想定される作物と、栽培方法の検討についてお話ししました。作物の選定だけでなく、それぞれの作物に最適な栽培方法を見出すことが、月面農場実現のカギとなるでしょう。



【参考文献】
宇宙航空研究開発機構.”月面農場ワーキンググループ検討報告書”.JAXA│宇宙探索イノベーションハブ.2019-05-31.
https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html

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