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世界の現場から【農業、気候変動...

2025/8/28

投稿者:スタッフ朝倉

世界の現場から【農業、気候変動、サプライチェーン】

こんにちは!TOWING海外事業開発部の永田です。

TOWINGで海外の事業を本格的に検討し始めてから約2年ほどが経ちましたが、この間に私たちは世界中を旅してまわり、農業や気候変動の分野等について世界各地の様々な課題を目の当たりにし、またそれを解決しようとしている多くの素晴らしい方々と出会いました。

今回の投稿では、この2年間で私たちが実際に見てきたグローバルな農業や気候変動に関する現場と、その中で今私たちがどのようなことに取り組んでいるかについて、まとめてご紹介していきたいなと思います!

土壌劣化の深刻化とその対策

様々な場面で頻繁に指摘されているように、現在世界の土壌の約30%は劣化していると言われており、国際連合食糧農業機関(FAO)によると今後90%の土壌が2050年までに劣化するのではないかと指摘され※1、このことが将来的な食糧生産に深刻な影響を与えると予想されています※2。

土壌劣化には物理的側面(土壌の固化、通気性の悪化など)、化学的側面(養分過剰、欠乏など)、生物的側面(土壌中の生物活動の低下により土壌病害虫が増加するなど)等の様々なタイプがあり※3、私たちが関わっている世界各国のプロジェクトでも、世界の現場を訪れながら各地で多様な劣化パターンが発生していることを目の当たりにしました。

例えば、私たちがプロジェクトを展開しているタイにおいては、砂質で酸性傾向にある土壌の劣化が問題となっており、米国においても非持続的な農法に起因する長期的な劣化土壌による生産性の低下が指摘されています。

画像図2:タイの土壌(写真:TOWING)

画像図3:ブラジルのCerrado地区における土壌(写真:TOWING)

こうした世界的に土壌への課題感が強まる中で、土壌の健康に着目した”Soil health(ソイルヘルス)”という概念が着目されてきており、また土壌を再生するための「環境再生型農業」といった農法の取り組みも世界的な潮流になってきています。興味深いのは、“土壌の質”というものが土地の価値に直結するという新たな潮流も出てきていることです。

投資の文脈では、例えばSLM Partnersといった投資企業が農地に大規模に投資をし、土壌や農地の生態系の回復を高めることで土地の価値を高め、リターンを得ていくといった取り組みも多くみられます※4。
政府も動いており、TOWINGがJICAと連携させていただいているブラジルでの事業においては、ブラジル政府が同国に存在する劣化した牧野を再生させ、これ以上アマゾン等の森林を伐採せず農業生産を拡大できる取り組みが進められており、TOWINGもその中で貢献ができないかを検討しています※5。

こうした経済的かつ、政策的な観点から土壌を評価することはもちろん大事ですが、私の中では、ある会合で中米のベリーズの若者と話していた際に、彼が言ってくれた言葉がとても印象に残っています。

「僕が住んでいる集落は農業が基盤なので、僕は土地に恩返しをするためにも、将来の世代に健康な土壌を育んでいきたいと思っている」(ベリーズの学生)

農業における気候変動と炭素除去技術としてのバイオ炭産業の勃興

農業は気候変動による影響を大いに受けている産業であり、私たちが農業現場に行ってその影響に関して聞かない国はありません。

高温のストレスにより作物が生育を止めてしまう事象が発生していたり※6、また最近の研究では気候パターンの変化により、乾燥する場所と湿潤な場所が変化してきており※7、それによって従来の経験則による農業のやり方ではうまく農業ができないケースをどこに行っても聞きます。

例えば、私たちが実証を進めているコーヒーの産業においても、雨や気温のパターンの変化により、コーヒーの花が身を着けずに落ちてしまったり、植物の生育パターンが読みにくくなっているといった事象も発生しています※8。

画像図4:私たちが訪れたブラジルのコーヒー農園

農業は気候変動に影響を非常に受け、かつ農業セクター自体も重要な温室効果ガスの排出源である一方、2023年に開催されたCOP29以降「農地を用いて温室効果ガスを減らしていく」アプローチにも近年非常に着目が集まっています。

具体的な取り組みとしては、農地において土壌を肥沃にしながらCarbon Direct Removal(炭素除去)※9を行う活動に注目が集まっており、Enhanced Rock Weathering(ERW)といった方法や、TOWINGが自社技術を活用しているバイオ炭(Biochar)といった取り組みが拡大しています。

バイオ炭は、地域に存在するバイオマスを活用しながら炭素除去を行う技術として、CDRの重要な分野の一つとして市場が急拡大しています。

DAC(Direct Air Capture)のような大規模集約型のアセットとは異なり、バイオ炭は非中央集権的で局地的な取り組みに適しており、この特性は再生可能エネルギーと非常に類似しています。

最も基本的な技術を使えば小規模でも実施可能である一方、現代的な技術を活用すれば大規模展開も可能といった特徴があります。土壌を肥沃にしながら炭素除去が可能という複合的な効果があることやスケールが調整できるといった特徴によって世界中で取り組みが加速しており、私たちが参加した最初の大型のバイオ炭カンファレンスである2024年のNorth American Biochar Conferenceでも1,000名近い関係者がカリフォルニアのSacramentoに集まり、業界の課題や機会について話し合いが行われていました。

画像図5:North American Biochar Conference(2024年)の様子

農業のサプライチェーンの大きな変革とチェーンをつなぐ”エコシステム”の構築

最後に、私たちが世界の現場で見てきたことで共有しておきたいことが、大企業によって張り巡らされた世界中へのサプライチェーンのネットワークと、それを変革していく取り組みです。

現在、上述した土壌の劣化への危機感や気候変動への対策から、多くの企業が自社のサプライチェーンをリジェネラティブ(再生型)に転換し、またそれを通じてサプライチェーン全体のレジリエンス(回復力)を高める取り組みを進めており※10、私たちも多くの企業と共創をさせて頂いております。例えば、米国においては米国の大手食品加工会社と連携しカリフォルニアにおける加工用トマト圃場の土壌肥沃度を高めながら炭素を貯留していくプロジェクトを実施しており、その他東南アジアにおけるサトウキビやブラジルにおけるコーヒー等、様々な作物や地理を舞台に実証を進めています。

これらの取り組みは、ESGやSDGsに合致する取り組みであることはもちろんなのですが、企業の競争力にも直結する取り組みであると捉えています。例えば、今後気候変動がより厳しい局面を迎えることが予想される中、温室効果ガスを排出するコストは炭素税や規制等によって顕在化していくことが予想され、また上述した農業を実施する環境が年々厳しくなっていく中で、例えば乱高下する化成肥料を減らしてより価格安定性が高い地域の肥料源に切り替えたり、土壌を健全にすることで水の保持力を高めて熱波に対する耐性を高めたりすることは、サプライチェーンの持続性やレジリエンスを高めて事業予見性や安定性を高めることに直結すると考えています。

画像図6:各国の炭素税価格(出所:Bloomberg NEF)

また、サプライチェーンを巡る社会の動向の中で私が取り上げたいのは、サプライチェーン上には現場の農家の方々や地域の自治体、また農産物を加工する人から物流を行う人、はたまた自然環境まで、本当に様々な方々(アクター)が関わっており、大きなエコシステムを形成しているということです。

こうしたエコシステムは複雑系ですので、当然ながら大企業がこうしたいから全員が同じ方向を向くということはなく、サプライチェーン上の様々な方々の共通認識を醸成しながら全員が幸せになる取り組みを模索していく活動を、断続的かつ中期的に行っていかないといけないと考えています。

こうした取り組みは既に世界中で行われており※11、作物等ごとにムーブメントをつくっていく営みが進んでいることを、様々な現場で見てきましたため、エコシステム全体でシステムを形成して取り組みを進めることが特徴的です。Viveなどの取り組みに見られるように、多様なアクターを連携させて大きなムーブメントを創出する動きが活発化しています。

※1. United Nations “FAO warns 90 per cent of Earth’s topsoil at risk by 2050”
※2. Liana E. Pozza, Damien J. Field “The science of Soil Security and Food         Security”
※3. Think and Grow Ricci “農地土壌劣化について。世界各国で危機感高まる
       土壌劣化”
※4. https://www.slmpartners.com/
※5. TOWINGプレスリリース “株式会社TOWING、JICAによる追加支援を受
       け、ブラジルにおける高機能バイオ炭事業の展開を加速”

※6. Shah Fahad et al. “Crop Production under Drought and Heat Stress:
       Plant Responses and Management Options
※7. Hrishikesh A. Chandanpurkar et al. Unprecedented continental drying,
       shrinking freshwater availability, and increasing land contributions to sea
       level rise
※8. iklimku.org “Battling the Changing Climate: The Despair of
       Banjarnegara’s Female Coffee Farmers”
※9. 炭素除去とは、例えばエネルギーを再生可能エネルギーに代替して温室
       効果ガスが発生することを「回避」するアプローチとは異なり、物理的
       に炭素を土中等に固定し、大気中から除去する取り組みを指します

※10. Mitsui & Co. “TRENDS IN REGENERATIVE AGRICULTURE IN THE
         US”
※11. 例えば、サトウキビの業界ではVIVEといった団体が持続可能なサトウ
         キビ生産の在り方を模索しています

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